『闇色のぼくたちは』


                         sub title:   one star on the stage

ぼくたちは
たったひとりで旅をして
たったひとりで夢をみる

だれもが持つ心の内輪の中で
たったひとり数々の苦悩と葛藤している
時に他人から鼻先で笑われるような
本当にどうでもいいささいな出来事にむしゃくしゃしたり
時に理不尽な現実にもどかしくなったり
苛立ち 諦め 吐き棄て
時にそれでもまだ振り返り
再び巨きなそれに対峙したりするのだろう


ぼくたちは おおきな現実の中で生きている
未来を見透かしても視えないものはある
過去を探っても解らないものはある

現在は未来よりも過去よりもさらに闇
未来を見つめながら 現実を奔るより
過去を握りしめながら 現実を反芻するより
過去も未来も心のなかに抱いて現実のなかを進みたい
不意の涙も笑顔も幸福も絶望も
彷徨って迷いこみながらただ夢を目指して進みたい

大きすぎる壁も 小さすぎる感動も
現実のなかで夢をみる
たったひとりでも夢に憧れつづける
ちからにはなるはず


ぼくたちは
たったひとりで涙して
たったひとりで嫉妬して
たったひとりで幸福を楽しみ
たったひとりで笑う

舞台のうえにはぼくたちひとりだけ
照明すら感じ得ないかもしれない闇の舞台
観客はきっと幻
けれど いる


ぼくたちは
たったひとりで旅をして
たったひとりで夢をみる

心の内輪で描いた夢は
まるで世界がまわるように瞼の奥を照らす
夢を目指すぼくたちの手のひらは
まるで流星が現れるように心の総てをあらう
夢をみるぼくたちは
まるで星屑を散らすように闇を飾りつくしてゆくだろう
まるで合唱をゆめみるように闇を塗りつぶしてゆくだろう
まるで幾千もの絵と印気がその真白な流れに刻まれるように
すべての記憶の風に後押しされて
真黒な舞台で踊りつづけるのだろう


                         sub title:   天色

ぼくたちは自由だ
流れる世界のなかにいる

躰をつくるひとつひとつが絶え間なく替わっていくから
世界をいろんな色で彩る
ぼくたちは自由だ


こんにちは
こんにちは
もしかしたら目の前のこの木は
いつか昔ぼくが食べたにんじんだったかもしれない
こんにちは
あいさつは忘れずに

溢れだした汗は 大地に染みていって
そらにかえる水は
いつか雲になって雨になって
また逢えたね

ぼくたちは自由だ
流れる風のなかにいる

大空のようなエネルギー
だれもみなおなじ流れのなかにいる


ぼくだちは自由のはずだ
奥底で色のない心を光らせる


                         sub title:   twinkle

思いに色があるというのなら
心に色があるというのなら
今のぼくたちは何色なのだろうか

ぼくたちはみんな
弱くて意地っぱりでプライドなんか背負って嘘吐きで
心のなかに思いものをひとつならず抱えてるから
憧れてるあの虹色にはなれやしない
澱んだ闇色
ひとりだけの色でくすぶってる

青くて澄んだ世界のように
生きとし生けるものみんな等しく
この空に自分の星があるというのなら
ぼくたちの星はどんなふうに輝いているんだろうか

青い青い闇色の世界で
ぼくたちはみんな
頼りなく瞬いてる

ふとふれた思いを 声に出して呼んでみた
見えないものが見たくって
こんな自分をどうにかしたくって
腹を割って見つめてみたい
ぼくたちはたったひとり この世界で
こんなにも弱いから

体の奥から下りてきたのは
かたちのない
てのひらのうえ
大きさすらわからない
視線の先
見えない闇色

黒く濁った泥沼が
この世界に潜んでいるなら
僕たちの思いは土くれのなか
ザラついた世界を手探りで駆け回る
大切なものを失くした気がする
記憶のなかでまたたいてるのに

あの笑顔を明るく照らせるなら
どんなに幸せだろうかって思ってる
ぼくたちは嘘吐きだけど この思いは真実なんだ
ぼくたちはたったひとりじゃ こんなにもさみしくなるから
ぼくたちはたったひとりでも きっと虹色になれるから
ぼくたちは
また鏡を見つめる

こんなに大切なものがあったろうか
さみしくてさみしくて霞んでいたんだ
虹色になりたい
真黒な渦に呑まれているとしても
いつかはあんなふうに輝けるんじゃないか
ぼくたちなりの色で
綺麗な色にはなれなくても
闇の中できらきらひかる

ほら今も
ぼくたちは みんな
黒ずんで濁って沈んでいって
でもどうすればいいかわからないから
こんな弱さも
意地もプライドも嘘も抱えたまま
ぼくたちはたったひとりで このひとりだけの色で世界を彩る
ぼくたちはたったひとりだから 時に憧れをさみしさにしてしまうけれど
このてのひらのうえ
大切なものは失くしたくない
真暗な闇のなかでひとつ
ぼくたちだけの色できらきらひかるだけ


                         sub title:   風 ―――――――up***

悔しくて唾を飲み込んだ
哀しくて嗚咽を零した

納得いかないことがどうしようもない
どうしてうまくいかないんだろう
打ちひしがれる度に崩れていく

ぼくたちはとても脆くて
強い風にあおられたらすぐにでも心が揺らいでしまう
ぼくたちはとても弱くて頼りなくてどうしようもない


優しい言葉を求めている
楽しいことを探している

星影に隠れたものに目を背けて
月明かりの下を大手を振って歩いている
夜の風は冷たいけれど
朝の風よりも優しくて
太陽の高笑いをさらっていってくれる

ぼくたちは闇色の心を抱えて
溢れる光の中を生きてきた

満足できないことが多くて
思い通りにならないことがどうしようもない
納得できないことが多くて
上手くできないことがどうしようもない
どうしてこんなに哀しいんだろう
喉の奥に詰まっていく吹きだまりをどうにかしたくて
熱を持つ胸をかきむしった

ぼくたちはとても脆くて
強い風にあおられたらすぐにでも消え伏せってしまう
夜の風どうか
この熱を冷ましてくれ


ぼくたちは
闇色の世の中でもがき進んで
闇色の世界で夢を見る
闇色の空に心を開け放つ
闇色に何もかも 解けていきそうだ

夜の風が冷たくて
この胸を締め付ける
どうか この熱を奪ってくれ


忘れ去ってしまいたい
苦しいことも辛いことも
忘れないでいたい
嬉しいことも愛しいことも
消えてしまいたい 闇色に解け込んで
ぼくたちはどうしてか上手くやることができなくて
どうしてこんなに弱いんだろう


夜の風どうか この熱ごと


  続いた……

  twinkleは KARMA より半分こしてふくらましました