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序章
 1 はじめに
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 遙か昔、宇宙にはいつからか生物が存在していた。
 どれくらい前に生物の始祖が生まれたのか、どのように始祖が生まれ、子孫が発達したのかははっきりしていない。宇宙の中に突如存在したとさえ言われている。研究はかなり前から為されているが、結果として、いつ宇宙が生まれて、星が生まれて、生物が生まれたのか、それらしい記録は無いし、記憶も無い。
 寿命は個体によって差が大きく、最長30数億年という記録があるそうだが、詳しいことはよく分からない。
 生物はそのままの姿で、何かしら変化はあったようだが、そのままの姿で進化したらしい。すべてが似通った姿形だというわけではないからだ。
 生物は一般に“カルト”と呼ばれる。しかし宇宙の発展のうえで、自然界から“自然に”生まれ出る“生物”も存在する。
 生物は、“生物”の進化を、その目で見てきた。自分たちと“生物”は、躰の構造から有する能力に至るまで明らかに違うことを認識した。“アニオム”と呼び、特に直立二足歩行をして高度な文明を持ち、食物連鎖から外れたいわゆる“人間”を、“ヒューム”と呼んだ。

 アニオムを除外したうえで、昔から、そして現時点でも、生物はざっと4つの種族に分類されている。
 『 魔族 』、『 獣魔族 』、『 悪魔族 』、『 自族 』である。
 これら『魔』の種族に共通することの一つに、一つの躰にいくつもの体があることである。
 『魔族』では「完全体(原形)」、「不完全体」、「人間体」、「狂乱体」、「魂魄体」。
 『獣魔族』では「完全体(原形)」、「不完全体」、「獣体」、「魂魄体」。
 『悪魔族』では「完全体(原形)」、「黒龍体」、「人間体」「魂魄体」。
 『自族』では「完全体(原形)」、「常体」、「主体」、「魂体」となるのがふつうである。
 もっとも効率的に、活発的に動けるのはそれぞれ人間体、獣体、常体なので、通常はこれらの体で生活している。
 そしてその奥に潜めている、生物の真の“姿”が完全体である。完全体と人間体との間で原形の一部が外に漏れているのが不完全体という。狂乱体は魂魄体と完全体とのラグだと言われている。魔族にしか存在しないので魂魄体と人間体とのラグだというほうが正しいかもしれない。
 個体にもよるが、直立二足歩行をするのは人間体と黒龍体のみである。
 『獣魔族』とは一般に直立二足歩行しない、人間体を持たない種族で、『魔族』とアニオムとが混ざり合った種である。同じように、自ら栄養を作る植物、“リアヴァム”と『魔族』との交配種が『自族』である。
 『悪魔族』は、『魔族』と似たような形をしているのだが、最も大きな違いは、肌が真っ黒と言っていいほど黒いことである。また他の種族と疎遠であるためその生態などについて詳しいことはよく分かっていない。「黒龍体」というのは、おそらく「不完全体」と似たようなものだろうと言われている。
 魂魄体は、躰と並んで生物の要の一つである。死後生物は、地獄にて裁判を受けて、「天上界」あるいは「封台」へ送られ、そこで肉体=躰と魂魄体のみで“保存かつ存在”するのだが、その場所が裁判を受ける前に天上界であると決まっている場合以外は、死んだ後の生物の躰はそこから消えて封台に移されることになっている。つまり魂魄体とは、死後躰と離れて、裁判を受けて、ふたたび躰へと戻る体のことである。
 魂魄体または魂魄体以外が欠けてもその生物は死ぬことはないが、魂魄体が消えると死んでしまう。このため『魔族』の場合だと4回殺される、つまり4回脳波が止まると死んでしまう。これを回避するために、体をどれか1つ消されて弱った躰を持続、さらに回復させるのに要するエネルギーをできるだけ軽くするため、より無駄な、大きなエネルギーを消費する体から先に魂魄体の身代わりにする。そのため『魔族』の場合、狂乱体→人間体→不完全体→完全体の順に消えてゆく。

 前出のように、生物は魂魄体と躰との2つが中心である。

 魂魄体はその強弱は個体差があるが、7種類の力を持っている。
 「魔法」という。もしくは「法術」「七法」と呼ぶこともある。
 「魔法」を使う力のことを「魔力」と言うのだが、これはあまり知られていない。
 7種類の「魔法」とは、「水」「炎」「風」「土」、ここまでを「四法」といい、「光」「化(か)」「信」この七つを「七法」という。

 「魔法」は生物の体に染みついている力、体質のようなものである。 体質によって自分が使える能力は限られてくる。一般に一番なじみやすいもの、つまり体質と合致したものを「専門能力」とする。 体質とは違う能力を修める、それはとても大変なことである。「専門能力」について集中的に修行するよりも倍以上の時間と精神力、体力を要する。中でも「精神力」は特に重要なものである。

 「精神力」とは、つまり“心の力”。「心」をベースにして初めて「躰」は能力を発揮できる。また「心」なくしては「魔法」は使えない。躰の芯に眠る力である。
 「精神力」は無論強い方がいい。生まれた時決定し死ぬまで一定であることはなく、鍛えれば鍛えるほど「心」つまり「精神力」が強くなる。精神力は教育の際闘争心をあおるためか数値で表されることが多い。 平均はだいたい1とされ、高くて70、最低でも0.01とされる。実際0.01以下である者は人形のようにただじっとしているだけで、全くいないと言っていい。

 体力はこの“躰の力”とほぼ同義であるが、心と躰は直結し互いに影響を及ぼしあうため、結局は精神力の強弱に左右されることが多い。 無論躰の強さ・弱さも精神力に影響を及ぼすが、心のそれと比べるとあまり大きくはないようである。 だいたい『魔族』と呼ばれる種族に強い精神力の持ち主は集中している。

 「魔法」は体質なので扱いやすい。感覚で術を練り出せば不規則でバリエーションに富んだ技が使えるが、それだけ不安定なので、術や技は完成されにくく、教育上不便なことが多い。
 「精神力」は尚更難しく、各の魔法や精神力に長けた一部の者しか上手く扱えなかった。
 そこで「呪術」がつくられる。呪文を唱え、思い通りの術を使う。
 「魔法」に呪文は必要ない。手や足から「気」を形として出現させる。ちなみに「気」は慣用的な言葉で、一般に精神力を練りあげた実際の力を指す。一方で「呪術」は「魔法」を基本として、「気」を形として出現させる。「呪術」のほうが量は多いが何かと便利だととる者が多いようである。「魔法」は単純な分難しいと考えるのだろう。

 「呪術」の出現は、文字の使用によってもたらされた。一つ一つの術は(呪)印と呪文、呪名の組み合わせで決まる。印は技を発動しやすく、つまり魔法を練りやすくするために手で作る文字の一種である。呪文、呪名は術を使うための導入文と、術の名前である。
 同じ言語=呪術言語を持つ呪術は同じ文字=呪術文字または呪紋(字)を持つ。この文字の単語がならんだ文字式から呪文、呪名などの情報が成り立ち、術が完成する。文字式を呪と言うこともある。
 「呪術」によって生活のための技術が格段に向上した。自動で布を織るシステム、自動で食べ物を加工するシステムなど、あらゆる産業で、たくさんのシステム=機械が生み出された。文明は高度になった。

 しかし高度になったのは文明だけではない。
 個体の戦闘力も、団体の戦闘力も上がった。
 「呪術」は「魔法」を使えずに「体術」だけで戦力になっていた者も使えるからである。

 「体術」というのは、文字通り肉体の力だが、「魔法」にはほとんど関係しない。精神力が大きく響く。『魔族』および『獣魔族』では「体術」は教育上、基本技術とされている。

 種族、家系、個人によって得意不得意は当たり前のようにある。これは異族同士の交際が法律的にも習慣的にも禁じられていない種族があるため、親が何族であるか、親の血からどの情報が最も多く伝わるかによってによって専門能力が左右されるからだ。
その他にも、我流の術を広めたり「魔法」を使えるはずなのに「体術」のみを使う者もいる。
 しかしどれだけ精神力や体質に大きな違いがあろうと、「体術」を使えないものはそういない。激しい運動に向いていない体質でも、ある程度の動作は実行できる。
 「Qwello」と呼ばれるゲームがあるが、これはもとは魔法や呪術、体術はもちろん、どんな武器・技術でも使用可能な戦闘ゲームである。これに規則を付け加え、最も単純な形に縮めたのが「Qwello-Body」というもの。
殴る蹴るのみの素手での格闘技となる。つまり体術のみで闘うゲームなのである。かんたんに言えば喧嘩である。実際このゲームが「できない」という者はいない。

 

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「我らが導よ、我らとこの世界を導き給え」